なぜオブラクが弾いたボールはリヴァプールの選手の前に転がらなかったのか?~7つのケースを検証~

UEFAチャンピオンズリーグラウンド16、リヴァプールVSアトレティコ・マドリード第2戦。

現在最強と目されるリヴァプールを相手に、アトレティコが勝利を上げた。

そのゲームで私が注目したいのはアトレティコのGKオブラクのセービングだ。この試合ではリヴァプールがアトレティコに浴びせたシュートは35本。浴びせられるシュートの嵐の中、オブラクは11回のセーブを記録した。

このセービングの数々を見る中で、私は疑問に思った事があった。

「なぜオブラクのセービングはリヴァプールの選手の前にこぼれなかったのか?」

今回はその検証記事となる。

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該当の7シーン

オブラクがボールを弾いたシーンは全部で7回。その全てが失点には繋がらなかった。

オブラクが単に素晴らしかったのか、それともアトレティコのDFに何か仕掛けがあったのか。それを検証すべく、7回のシーンを図解しながら解説したいと思う。

全てのケースを振り返るに当たり前提条件として予め認識していただきたいのは、この日は雨が降ってピッチがスリッピーだった事。「オブラクはいつもならキャッチ出来るボールも弾く事でセーフティに対応していた」「リヴァプールは低く速いクロスボールを多用した」という事実である。

ケース① 13:50のシーン

まずはケース1、13:50のシーンから検証しよう。

この図はアトレティコ側のPA内を拡大して表現している。アトレティコを黒、リヴァプールを赤、オブラクを黄色で表現している。

アトレティコから見て左サイドからアレクサンダー=アーノルドの強烈なシュートがゴールに飛んできたシーン。オブラクは向かって右側にボールを弾いた。

ここで注目したいのは、アトレティコから見て右サイドのゴール前に詰めているマネとオブラクの間にRSBのトリッピアーがポジションを取っている事。そしてオブラクはマネと中央に位置取っていたワイナルドゥムを外して、スペースへとボールを弾いた。

また、RMFのコレアがゴール前まで戻っていた事も忘れてはいけない。このポジションにコレアがいる事で、こぼれ球が逆サイドのロバートソンに渡った際も直ぐに対応できる。

オブラクから見て向かって左側の目の前にいるフィルミーノに対してアトレティコのCBは遅れを取っていたものの、オブラク対応とトリッピアー・コレアのポジションは適切なものだったと言える。

ケース② 35:34のシーン

このシーンもシーン①に近い。

アトレティコから見て左サイドからアレクサンダー=アーノルドが高速のクロスを入れる。ニアでフィルミーノがボールに少しだけ触ったボールをオブラクが逆サイドのスペースに弾いた。

弾いたボールはRSHのコレアが拾い、クリアーした。

このシーンでもオブラクの弾く方向は適切で、また逆サイドから詰めるマネに対するトリッピアー・コレアのポジションも適切なものだった。

トリッピアーはケース①同様に、常に相手(この時はマネ)とゴールの間に位置取っており、万一オブラクがマネの方向にボールを弾いたとしても失点のリスクを軽減できる場所にいた事が分かる。

ケース③ 53:10のシーン

シーン3はオックスレイド=チェンバレンが地を這う強烈なミドルシュートを放ち、それをオブラクが外に弾いたシーン。

このシーンではアトレティコのCBサヴィッチがマネに対してこぼれ球の反応が遅れ、前に弾いていたらマネに点を取られてしまう状況だった。

オブラクは冷静に外に弾き、失点を免れた。

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ケース④ 68:17のシーン

このシーンはアレクサンダー=アーノルドが強烈なシュートを放ち、オブラクは向かって右サイドに弾いたシーン。

ゴール前に詰めているマネに対するサヴィッチの反応はまたしても遅れていたが、オブラクはマネの方向に弾かず、右サイドに弾いた。

弾いたボールは右サイドに詰めていたロバートソンの元に渡るが、ロバートソンのシュートはトリッピアーがブロックした。

このシーンでも致命的なエラーをする事なく、よりリスクの低い場所に弾くオブラクの好プレーが光った。トリッピアーの、ロバートソンのシュートに対する反応とポジションも適切なものだった。

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ケース⑤ 83:40のシーン

このシーンでは向かって左サイドから攻め込んできたワイナルドゥムが強烈なシュートを放ち、オブラクが逆サイドに弾いて凌いだシーン。こぼれ球はトリッピアーが拾った。

このシーンではゴール前に詰めていたフィルミーノに対するアトレティコDFの警戒はやや薄かったが、オブラクが安全な場所に弾いて事なきを得た。

とはいえ、このシーンについてはシュートがあまりに強烈だったため、オブラクも”触るのがやっと”という状況だった。

ケース⑥ 91:56のシーン

このケースでは、向かって左サイドからワイナルドゥムがグラウンダーのクロスを上げ、それをオブラクがワイナルドゥムの方向に弾いたシーン。

この試合では初めて「ボールが来た方向」にボールを弾いた。

この時のアトレティコのゴール前のDF陣のポジションは適切に保たれており、オブラクが目の前のサラー方向にボールを弾かない限りは失点に繋がる確率は低かったと言える。

オブラクも、サラー方向(ゴール正面)に弾かない事だけを意識していたのかもしれない。

ケース⑦ 106:12のシーン

このケースでは向かって左サイドからマネがシュート性のクロスをゴール前に入れ、オブラクがゴール正面に弾いた。

この試合で初めてオブラクはゴール正面に弾いたが、そこはアトレティコの選手が密集しているゾーンで、クリアーをするのは容易だった。

このセービングで注目したいのは、オブラクが”強めに弾いた事”だ。目の前に弱くこぼしていた場合、ゴール正面にいたフィルミーノに反応される可能性があった。

少なくともフィルミーノが反応できない程度の強さでボールを弾いてゴールを守ったのが印象的だ。

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結論

今回の「ボールを弾いた7シーン」に共通する事。それは2点あった。

ありきたりな内容になってしまうかもしれないが、この2点を持って「なぜオブラクのセービングはリヴァプールの選手の前にこぼれなかったのか?」の検証結果としたい。

  • オブラクは”致命的になる場所”を外してボールを弾いていた
  • トリッピアーとコレアが適切なポジションに立っている

オブラクは”致命的になる場所”を外してボールを弾いていた

これはオブラクの技術の賜物だろう。

リヴァプールの強烈なシュートやクロスがゴールを襲ったが、オブラクは常に”致命的になる場所”を外してボールを弾いていた。強烈なシュートが来る過程でゴール前の状況を把握し、なるべくスペースにボールを弾いている印象を持った。

アトレティコのDF陣が必ずしも完璧なポジションを取れていたわけではない中で、致命的な場所を外すセービングでピンチを脱していた。

また、印象的だったのは”自分の目の前に弾く”事は一度も無かった事。前に弾く時は必ずゴール前に戻ってきた最終ラインより前方にボールを弾いている。これを行う事で、仮に相手にボールが渡ってしまったとしても、自分とボールの間には味方DFが立っている事になる。

トリッピアーとコレアが適切なポジションに立っている

このゲームでオブラクがボールを弾いた7シーンのうち、実に6シーンがアトレティコから見て左サイドからだった。

この時に、逆のSBにあたるトリッピアーが対面のFW(主にマネ)よりも常にゴール側に立っていた事、そしてRMFであるコレアが対面のロバートソンよりもゴール側に立っていた事も共通点の1つ。

オブラクがマネやロバートソンの方向にボールを弾いても、トリッピアーやコレアがクリアーする事が出来た。オブラクのセービングが見事すぎたためにトリッピアーやコレアのポジションが目立つ事は無かったが、ボールサイドではない彼らが地味な動きを常に繰り返し、リスク管理していた事はアトレティコの勝利に繋がったはずだ。